正視眼では見えない中国(12)
私は中国・上海に1998年から1年間だけアメリカ企業の駐在員として滞在していました。
その時見聞した奇妙なことを書きます。
「社長、10時に大華証券の張社長と会見ですよ」と運転手の兵兵くんが連絡してきました。
私の会社は建築資材の輸入会社なので証券会社とは一切関係がないのですが。
社員の王さんが遠い親戚の大華証券の張さんが私にどうしても会いたいと言っているというではありませんか。
私にはぴーんときました。
近々アメリカに出張に(遊びに)行くので、彼と彼の会社の幹部のアメリカでの接待をアレンジしてくれないか、というものです。
接待とはロサンゼルスでのホテルの手配、観光案内、ラスベガスへの接待、お土産、全てを面倒みてほしいという図々しもの。
アメリカまでの航空運賃までは世話にはならないとまで聞きました。
なんて厚かましいんでしょう。
張社長が私の会社まで来て願い出るのなら考えても良いでしょう、なんて微塵も思いませんでした。
もう兵兵くんが車を用意しちゃったんで私が行かざるえませんでした。
(どうも中国人の頭の中は理解できません)
大華証券へは私の事務所から15分くらいのところ。
でも交通渋滞で、けっこう道は混んでいました。
兵兵くんが「ちょっと裏道抜けて行きますから」と言って、車はスイスイ走って行ったけれど10時に間に合いそうもありません。
兵兵くん、焦ってちょっぴり車のスピードを上げました。
すると脇道から赤色灯をつけ、サイレンを鳴らした白バイが後ろからついてくるじゃありませんか。
道端に停車を命じられ、お見事スピード違反の切符を貰いました。
結局、約束の時間に10分遅れ。
大華証券の張社長、上手な日本語で「どうしました、お待ちしてたんですよ」と挨拶。
「いや、申し訳ありません。来る途中、運転手の兵兵くんがスピード違反しちゃって。それで遅くなりました」と言い訳を言っているところに車を駐車してきた兵兵くんが来ました。
兵兵くんは張社長に上海語で何か言っています。
兵兵くんはニコニコしながら「張社長の友だちが外灘の警察署長だそうで、今、その署長の部下がこのスピード違反切符取りに来てくれるそうです」と言うではありませんか。
私と張社長は世間話をしていると、いかつい若い男性が部屋に入ってきました。
外灘署の刑事、余さんだという。
「切符見せてください。あ、これね。大丈夫。なかったことにしときますから」と余刑事。
スピード違反切符を手のひらで丸めると、部屋を出てきました。
「署長の李さんによろしくね」と張社長は余刑事を見送りました。
私はあまりにも短時間で処理されたことと、されたことに呆気に取られて、何も言えませんでした。
張社長は何もなかったかの如く「4月のロサンゼルスって気候はどうなんですか?」とアメリカ旅行の話をしてきました。
(後日談ですが、張社長は骨折かなんかで4月のアメリカ行きは中止になりました。これ幸いとばかりに彼の骨折を喜びました)
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